中小企業のなかでも担当者の業務負担が大きいのが「経理業務」です。1人あるいは少人数の経理社員で業務を回していて、効率化ができていないと感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。
人手不足から経理がずさんになると会社にも甚大な悪影響となるため、早急な対策が必須です。
本記事では中小企業の経理の特徴と経理担当が不足する原因、経理担当者不足を放置するリスク、不足への対策などを解説します。
中小企業の経理の特徴

中小企業の経理部門の体制は企業ごとに異なりますが、ある程度似たような組織体系になっている傾向にあります。
ここでは、中小企業の経理によくある特徴として、以下の4つを解説します。
経理担当者が1人のみのケースが多い
中小企業は限られた人材を営業や製造など売上に直結する部門に回す必要があり、経理担当者が1人だけ、あるいは少人数のみということも珍しくありません。
実際、中小企業庁「平成26年度 中小企業における会計の実態調査について(中小会計要領の普及状況)」によると、中小企業の58.2%は経理・財務担当者が1人であるとされています。
出典:平成26年度 中小企業における 会計の実態調査について(中小会計要領の普及状況)
多岐にわたる経理業務を1人で担当することになると大きな負荷がかかり、ミスの増加や離職率の増加といった課題につながっていきます。
経理担当者1人の業務範囲が広い
経理担当者が1人しかいない中小企業の場合、その1人にのしかかる業務負担がどうしても大きくなります。
複数の業務を1人で兼任すると、個人の経験や能力、知識に業務が依存する「属人化」が起こりやすくなります。その人が出勤しているときは業務がスムーズに進んだとしても、休職や退職をすると業務が滞る可能性が生じます。
また、1人ですべての仕事をこなすと忙しさからミスが増えやすくなります。ダブルチェックができないと致命的なミスを発見できず、後から大きな問題になるかもしれません。
アナログ手法でヒューマンエラーが多い
中小企業の経理の特徴として、会計ソフトなどのデジタルソフトが導入されずにアナログなやり方で経理が進められている傾向にあります。手入力でデータを入力したりする従来のやり方は、ヒューマンエラーの温床になっている場合があります。
- 書類の紛失
- データの入力ミス
- 金額の記載ミス
- 計算ミス
月末・月初や期末など忙しい時期はダブルチェックがおろそかになりやすく、ヒューマンエラーが特に発生しやすいため注意が必要です。
経理担当者が別の業務を兼務する
中小企業の場合、経理担当者が別の部署や部門の仕事を兼務している可能性もあります。経理だけを仕事にする専任担当者がおらず、総務や財務などと兼務しているケースは珍しくありません。
経理は本来重要な業務であるにも関わらず、ほかの仕事の手が空いたときに行うものという認識では重大なミスが発生することも考えられます。
中小企業の経理担当が不足する原因

中小企業の経理担当が不足しがちなのは、多くの企業にとって頭の痛い悩みです。ではなぜ、経理担当者は不足しやすいのでしょうか。
考えられる原因は以下のとおりです。
- 労働人口の減少
- 間接部門の募集は後回しにされがち
- 専門性の高い人材は見つかりにくい
- ルーチンワークが嫌で退職する社員がいる
ここからは中小企業の経理担当が不足しやすい理由の詳細を解説します。
労働人口の減少
中小企業の経理の社員が確保できない原因の1つに、労働人口の減少があります。少子高齢化によって労働人口が減少しており、今後は経理に関係なく日本全体の働き手が不足すると予想されています。
実際、総務省の「生産年齢人口の減少」によると2050年には2020年と比較して約2,000万人の労働人口が減少すると予想されています。
働ける人口が少なくなるほど人材確保が難しくなり、中長期的に経理担当者が不足する1つの原因になるでしょう。
間接部門の募集は後回しにされがち
経理部門が人手不足になりがちな要因として、経理部門が「直接利益を生み出せる部門ではない」ということが挙げられます。
前述の通り労働人口が減少するなか、採用できた人材は営業部や製造部など売上に直結する部署に配置されがちです。
専門性の高い人材は見つかりにくい
経理業務には、会計や簿記といった専門的な知識が必要です。未経験の人が働きたいと申し出ても、簡単に就ける仕事ではありません。
また、簿記の資格さえ持っていれば良いということはなく、パソコンに関して総合的な知識を要求されることもあります。
ルーチンワークが嫌で退職する社員がいる
経理部の仕事は高度な専門知識を要求されつつも、地味なルーチンワークが多い仕事です。激務に加えてやりがいが感じられないと、経理社員のモチベーションが下がる原因になる恐れがあります。
中小企業の経理担当者不足を放置するリスク

普段から経理担当者1人で仕事を回していると効率が良いように感じますが、万が一のことを考えるとさまざまなリスクがあります。
考えられるリスクは以下のとおりです。
- 担当者の不正に気づかない
- 業務内容の属人化が進む
- 担当者の不在に対応できなくなる
- 会社の資金繰りが悪化する
ここでは、経理担当者が不足することのリスクの詳細を解説します。
担当者の不正に気づかない
経理がずさんな状態では、不正行為に気づかない場合があります。経理業務を1人の社員に依存すると、その社員に「いつでも不正できる環境」を提供しているようなものです。
現金の出入りや取引の記録を独占的に行える状況では、架空の経費計上や会社の資金の横領などの不正が簡単にできてしまいます。
担当者の不在に対応できなくなる
経理担当者が1人で業務を回すことが当たり前になると、業務の「属人化」がどんどん進んでいきます。
会社の経理業務ができる人がいないのは死活問題であるため、1人経理の企業はマニュアルの作成やほかの従業員の教育などリスクヘッジを考える必要があります。
会社の資金繰りが悪化する
経理がずさんな状況が続くと、会社の資金繰りにも影響するため注意が必要です。人手が不足すると重要書類が決算期以外に作られなくなり、経営者が月ごとの経営状況を追えなくなる可能性があります。
会社のお金の流れを正確に把握できない状態では支払能力を超えた支出を積み重ねたり、急な支払いに対応できなくなったりするかもしれません。
中小企業の経理担当者不足の対策とは
経理担当者が不足する中小企業は、万が一のリスクを回避するためにも、経理業務の改善を進める必要があります。
経理業務の内容を整理して効率化する
1人経理が横行している企業などは、業務のプロセスを整理したうえで効率化させるのが有効です。
まず、現在の経理担当者に聞き取りをして、経理業務を全て洗い出し、削減できる業務がないか、ほかの部署に協力してもらえる仕事がないかを精査していきます。
担当者の人数を増やす
現在いる経理社員の負担があまりに重い場合、経理担当者を増やすのも選択肢の1つです。担当者1人に責任者1人の複数名の体制にすることでダブルチェックが可能になり、ミスや不正を未然に防ぎやすくなるでしょう。
Excelやスプレッドシートの関数・マクロを利用する
アナログの経理業務を行っている企業の場合、Excelやスプレッドシートの「関数」「マクロ」の機能を利用する対策があります。
ミスが起こりやすい計算を自動化して間違いない計算結果を出せるようになります。
会計システムを導入する
経理の人材不足の企業は、経理システムの導入によって社員の負担を軽減できる場合があります。
会計・経理システムを導入すると、仕訳や経費計算など、面倒なルーチンワークが自動化されるため、日々の業務負担の改善が期待できます。
経理業務のアウトソーシングを実施する
どうしても自社で業務のための人材を確保できない場合、経理業務の一部をアウトソーシング(外注)することも検討しましょう。
給与計算や税務申告など専門性の高い業務をアウトソーシングすると正確な業務が実現できるだけでなく、経理担当者の負担軽減につながります。
まとめ
経理は専門知識が必要で、かつ売上に直結する部門でないことから人手不足が生じやすい部署です。しかし、そのままにしておくと重大なミスが発見されないままになったり、不正の温床になったりとさまざまなリスクがあります。
会計ソフトの導入やアウトソーシングなども駆使し、適正な業務が行われるよう早急に対策を検討しましょう。
監修者
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |


