経理業務をアウトソーシングする検討をしていると、「経理代行と税理士事務所、どちらに頼めば良いの?」と悩むことがあります。
自社に合うアウトソーシング先を知るには、それぞれの特徴や依頼できる内容の違いを把握することが大切です。
本記事では経理代行と税理士事務所のサービスの違いや、利用する際のメリット・デメリット、注意点などを解説します。
Contents
経理代行とは
経理代行とは、社内の経理業務を外注できるアウトソーシングサービスのことです。
経理を外注する際の選択肢としては、主に以下の2つがあります。
- 経理代行サービス
- 税理士事務所
経理業務は簿記などの専門的な知識やスキルが求められるため、社員の育成にコストや時間がかかります。教育にリソースが割けずに経理に携われる人間が不足しているようなケースでは代行が役に立ちます。
経理代行と税理士事務所のサービスの違い
経理代行のほかにも、経理をアウトソーシングできる存在が「税理士事務所」です。
両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、それぞれのサービスについて、以下の3つの違いをみていきましょう。
経理代行は税務申告以外の幅広い業務を請け負っている
経理代行サービスに対しては、「税務申告」に関する業務を依頼することはできませんが、それ以外の「給与計算」「年末調整」など広い範囲の経理業務を外注できます。
ただし、記帳代行(毎日の取引をすべて記録して帳簿を作成するまでの業務)のみの依頼に関しては、経理代行業者では対応していない可能性もあります。
税理士事務所は税務申告もまとめて申告できる
税理士事務所は経理代行サービスと違い、税務申告までまとめて依頼できるというメリットがあります。
経理代行サービスは税理士と提携していない限り税務申告に関しては対応してもらうことができません。
なぜなら、税務申告は税理士でないと対応できないと法律で定められているためです。
自社の業務のうち、税務申告までまとめて依頼するなら、税理士事務所に依頼することになるでしょう。
依頼時の費用面にも違いがある
経理代行サービスと税理士事務所では、経理を外注する際の費用が異なるケースが一般的です。
税理士事務所は専門性の高い組織ですが、依頼すると経理代行サービスよりも報酬が高額になる傾向にあります。
実際のところ、税務申告以外の記帳代行の場合、経理代行サービスでも税理士事務所でも業務の品質に差が生じないこともあります。
品質に全く差がないのであれば、税理士事務所よりも経理代行サービスに依頼したほうがコストとしてはお得かもしれません。
ただ、経理代行サービスは税務申告や税務相談など税理士しかできない業務を依頼できません。
依頼内容によって、外注先は柔軟に変更する必要があるでしょう。
経理代行サービスに経理を依頼するメリット
経理代行サービスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリットとしては、以下の2点が考えられます。
- 業務の効率化ができる
- コア業務に専念できる
業務の効率化ができる
経理代行を利用すると経理に特化したスキルをもつ外注スタッフに自社の経理業務を代行してもらえるため、社内で処理するよりも効率的に経理業務ができるメリットがあります。
また社内で契約社員などを雇うと勤怠管理や給与計算などの業務が発生しますが、外注すれば報酬を支払うだけで済むので業務が大きく増えることもありません。
業務を効率化させるなら、経緯代行への外注は有力な選択肢になるでしょう。
コア業務に専念できる
会社が利益を得るために、経理部が本来やるべき業務は「資金繰り」や「予算管理」です。記帳などの業務を外注することで、これらコア業務に社員が集中できるようになります。
また、会社によっては総務や営業などほかの部署の人間が経理部の仕事を兼任していることがあるかもしれません。自部署の仕事に集中できない環境で予算達成は難しく、会社の利益を圧迫する原因になることがあります。
記帳などの業務を外注できれば社員は自分の部署のタスクに集中でき、業績の向上や残業時間の削減による従業員満足度の向上を果たせるでしょう。
経理代行サービスに経理を依頼するデメリット
経理代行サービスは経理業務の一部を外注することで自社のコア業務に専念できるなどのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
- 情報漏えいのリスクがある
- 社内に経理のノウハウを残せない
申し込む前に、上記のデメリットを事前に理解しておきましょう。
情報漏えいのリスクがある
情報漏えいのリスクは、経理代行を利用する際に真っ先に考えておく必要があることです。企業の経理という重要情報がどこかに流出すると、会社の経営に多大な悪影響を与える可能性があります。
企業にとって情報漏えいは死活問題になるため、業者がどのような対策をとっているかは必ず確認しましょう。
社内に経理のノウハウを残せない
経理代行を利用することの問題として、自社の社員の教育ができないという点があります。
経理代行はプロフェッショナルなので外注すれば効率的に経理業務を進められますが、そのノウハウは自社に還元されません。
いつまでも自社の経理社員が育たないと、外注をやめることができなくなります。
段階的に外注するジャンルを少なくできるように自社社員を教育する計画を立てるなど、自社に経理ノウハウを蓄積する工夫や努力をしましょう。
経理代行サービスを利用する際の注意点
経理代行サービスを利用する際には、以下のような注意点もあります。
自社が外注したい内容に対応していないと探し直しになって手間になるため、見積もりの段階で以下の2点は必ず確認しましょう。
- 専門家との連携サービスがあるか確認する
- 対応する業務範囲を確認する
専門家との連携サービスがあるか確認する
経理代行サービスは、税理士しか対応できない「税務申告」「税務相談」などを依頼することはできません。その代わり、税理士や社労士などの専門家と提携していることがあります。
業者によっては契約する専門家を自社と提携している事務所に指定してくることもあります。
「経理は外注したいけど、顧問先はそのままでいたい」という場合には、その条件で契約できることを事前に確認しましょう。
対応する業務範囲を確認する
経理代行サービスとひとくちにいっても、対応している業務内容は全く異なります。
自社に適したサービスを選ぶためにも、候補の業者が対応している業務内容を確認しましょう。
例えば、税務申告まで丸ごと外注するなら、税理士事務所が提供している経理代行サービスが選択肢になるでしょう。
まとめ
経理代行業者は税務申告や税務相談など税理士しかできない業務以外の業務を外注できる、税理士事務所は税務申告まであらゆる業務を外注できるという違いがあります。
ただ、どちらを選択するかによって費用が異なるため、自身の会社が外注したい業務にすべて対応している外注先を選択しましょう。
費用面のみ考えるなら外注先は経理代行サービスにし、税務申告などは別の税理士事務所に依頼したほうが良い場合も少なくありません。
自社で対応できずに困っている内容をできるだけ安く外注できる業者を探しましょう。
監修者
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甲田拓也 (公認会計士税理士甲田拓也事務所 代表)
早稲田大学卒業後、PwCグローバルファームや個人会計事務所を経て現事務所を設立。節税、資金繰り、IPO・マーケ支援を行うプロ会計士として活動。YouTubeでも情報発信中! |